橋梁塗装工事とは
隅田川の橋と東京の未来を支えるメンテナンスの必然性 ―都市インフラの高齢化と向き合う時代へ―
老朽化が進む都市インフラとしての橋梁群
東京を東西に貫く隅田川には、1920〜40年代の「帝都復興橋梁群」など、築80年以上を経た橋が複数存在します。清洲橋(1933年)、永代橋(1926年)、勝鬨橋(1940年)などは、今も現役で利用されている一方で、構造的には老朽化が顕著に進んでいます。
特に鋼製橋梁は、雨水・塩分・排気ガスによる腐食や、交通荷重の増大により疲労が蓄積しており、表面的な補修だけでは追いつかない構造的リスクを内包しています。国土交通省の調査でも、「建設後50年以上が経過した橋梁の割合は、2040年には全体の約75%に達する」と警告されています。
■ 橋の崩落が都市に与える深刻な影響
隅田川の橋は、単に東西を結ぶ物理的通路ではなく、東京の「経済・防災・生活インフラ」を支える戦略拠点です。仮にひとつでも通行不能となれば、以下のような連鎖的影響が発生します。
・救援・避難の支障:災害時の緊急ルートが断たれ、救命活動や避難誘導が遅れる
・観光・地域経済への打撃:浅草〜両国〜月島などの観光動線が寸断され、地域活性化が停滞
・文化的喪失:歴史的・象徴的価値を持つ構造物が失われる可能性
■ インフラから都市の信頼へ
私たちが無意識に渡っている橋には、技術者や行政が積み重ねた数十年にわたる「見えない努力」が詰まっています。隅田川の橋を未来へ継承することは、単に構造物を保全することではなく、「都市としての信頼性」を守ることに他なりません。
勝鬨橋スペシャルレポート
─ 文化財を未来へつなぐ、infratの挑戦 ─
1. プロジェクト概要
勝鬨橋は昭和15年に開催計画のあった万国博覧会のメインゲートとして設置計画がなされ、昭和年に着手し昭和15年に完成した。
設置から85年経過し、塗膜剥離など、美観を低下させるだけでなく、構造材の腐食進行も見られることから、文化財としての価値の維持や交通インフラの健全性を守るべく、塗装による長寿命化対策を行うこととなった。
勝鬨橋は、明治の時代より幾度となく架設計画がありました。
1905(明治38年)1月18日に日露戦争における旅順陥落祝勝記念として有志により築地と月島を結ぶ「勝鬨の渡し」が設置されました。この渡しに由来して「勝鬨橋」と命名されました。
勝鬨橋は昭和15年に国家的イベントとして計画された万国博覧会のメインゲートとして計画されました
昭和8年6月10日に工事を着手し、資材が不足する中、7年をかけ、昭和15年6月14日に完成しました
東京市(当時)、錢高組を主体とし、石川島造船所(現IHI)、横河橋梁製作所(現横河ブリッジ)、川崎車両(現川崎重工業)で工事を行いました。
当時は、隅田川を航行する船舶が多く、陸運よりも水運を優先させる可動橋として設計され、大型船舶の通航を可能としました。 午前9時、午前12時、午後3時の1日3回、1回につき20分程度開いていました。さらに昭和22年12月24日には都電が開通しています。
しかし、東京オリンピックが開催された昭和39年以降は、跳開回数は年間100回を下まわるようになり、昭和45年11月29日を最後に跳開されることはなくなりました。
勝鬨橋は、我が国で最大規模の跳開橋として、当時の最先端の技術を駆使して建設されており、我が国の橋梁技術史上、高い価値がある橋梁として隅田川に架かる「清洲橋」「永代橋」と共に平成19年6月に国の重要文化財に指定されました。
跳開部の機械設備が歴史的景観を構成する設備として、機械技術面で歴史的意義のある「機械遺産」に平成29年8月に日本機械学会によって認定されました。
2. infratのミッション
「隅田川に架かる橋のうち、「勝鬨橋」「清洲橋」「永代橋」が重要文化財に指定されており、勝鬨橋が最後の長寿命化対策工事となる。清州橋及び永代橋を手掛けた技術者を擁するinfratが
・美しく
・長期にわたる安全性
のために長寿命化工事に当たることにより、次世代以降への文化財の継承と交通要衝の維持を行うこと
足場設計・架設
安全に昇降でき、且つ安全に作業できる環境とするため、システム足場を主体とした足場を計画した。計画の際に構造計算を行うと共に、道路・航路通行への影響ができるだけ少なくなるよう、関係各所と連携を取り、柔軟な規制方法により施工に当たった。
旧塗膜の高精度除去
自動噴霧装置と手作業を併用し、橋梁細部の微細なクラックまで一切残さず除去
多層塗装システム
塗装は、素地調整が肝要である。すなわち旧塗膜の除去とその後の鋼材素地への足付けである。今回は「循環式ブラスト工法」を採用し、確実に塗膜を除去すると共に、鋼材面への足付けを同時に得ることができ、また、塗膜とグリッドを分離することにより産業廃棄物の抑制も同時に実施できるものである。
使用した塗料は
下塗り 有機ジンクリッチペイント:鋼材の腐食を抑制する
下塗り 弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料:塗膜の厚さを確保し鋼材を保護する
中塗り 弱溶剤形ふっ素樹脂用中塗塗料:上塗り材との付着を良くする
上塗り 弱溶剤形ふっ素樹脂塗料:ふっ素による美観の維持及び塗膜の保護
であり、現行の最上級塗装系統である。
それらを駆使し、堅実な施工管理により長寿命化に貢献した。
3. 難易度のポイント
可動橋機能との両立
桁の跳開機構を妨げずに作業足場を設置し、将来の可動を保証
限られた作業空間
橋という性質上、通行への影響を少なくするため、仮設機械の省スペース化が必要であった。そのため、機器を常設ではなく、移動式にするなどの工夫により、大きな交通影響を避けて施工することができた。
歴史美観の維持
色調・艶感をオリジナルに極力近づけるため、試験吹付けを重ね、最終調色を実現
4. 社会的意義と成果
文化財としての価値継承
「開かずの橋」として親しまれる景観を損なわず、後世に残す
メンテナンスコストの抑制
長寿命化により、次期大規模更新までの期間を延伸。税金負担の平準化に貢献
地域観光・まちづくりへの寄与
美しく保たれた橋梁は、周辺観光資源の魅力をさらに高める
5. infratが選ばれる理由
文化財メンテナンスの豊富な実績
東京都から発注される鋼橋塗装のほか、鉄道用鋼橋や高速道路などさまざまな交通インフラのメンテナンスを行っている。
職場・安全への徹底配慮の積み重ねにより下記の実績につながっております
橋梁長寿命化修繕工事(朝潮橋)
江戸橋補修工事(塗装)(その1)
新宿線中川第3第4橋梁塗装工事
東山歩道橋維持工事(塗装)
日暮里・舎人ライナー西新井大師西駅~舎人駅間塗装工事(R3-1)
日暮里・舎人ライナー扇大橋駅から谷在家駅間塗装工事(R4-1)
稲城大橋(ランプ部)維持工事(壁高欄補修他)
富士見橋補修工事(その1)(4豊・有ー1)
富士見橋補修工事(その2)(5豊・有-1)
睦橋長寿命化工事(その5)
中河原南歩道橋維持工事(塗装)
熊野橋歩道橋維持工事(塗装塗替及び修理)
鹿浜橋整備工事(塗装)
勝鬨橋長寿命化工事(塗装)(その2)
独自技術の連携
自動噴霧+手吹き、3D光学測定など最新装置を駆使
環境・安全への徹底配慮
粉塵抑制・遮蔽・夜間景観保全など、周辺環境を尊重
勝鬨橋プロジェクトをはじめ、infratは「文化財の未来をつくる」パートナーとして、これからも都市の架け橋を守り続けます。
ぜひ、詳しい施工事例や技術解説をご覧ください。
勝鬨橋の未来を支える施工管理
― 株式会社infrat 染谷 勝利
染谷 勝利
株式会社 infrat 施工管理技術者
主な担当:勝鬨橋塗替塗装工事(令和4年)
令和7年度 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会「優秀施工賞」受賞
前職にて清洲橋長寿命化工事(塗装)に従事
日本唯一の可動橋として知られる勝鬨橋。
令和以降に行われた塗替塗装工事で、現場全体の工程・品質・安全管理を担ったのが、
株式会社infratの染谷勝利です。
「勝鬨橋は“動く橋”です。
可動部が動作するたびに塗膜が摩耗する。
だから施工では、“どう塗るか”より“どう守るか”を常に意識しています。」
橋の構造を理解し、塗装班や点検班、足場業者など複数の協力会社を統括。
交通規制の時間や天候条件を考慮しながら、限られた時間の中で最大の品質を引き出す調整を行いました。
infratは橋梁・トンネル・鋼構造物の塗装・補修を専門とする企業です。
その技術力を現場で発揮させる要となるのが、施工管理者の存在。
染谷は、塗料メーカーや発注者との打合せから、塗膜厚測定・工程記録・安全書類作成までを一貫して担いました。
「塗装は見た目の美しさ以上に、膜厚・密着性・防錆性能が命です。
施工管理者の役割は、それを“確実に実現する環境”を整えること。
職人が安心して腕をふるえる現場をつくるのが自分の仕事です。」
勝鬨橋では、可動機構の構造に配慮した防錆仕様を採用し、気温・湿度の変化に応じて塗装手順を細かくコントロール。管理精度の高さが、最終的な品質を支えました。
染谷は前職時代、**清洲橋長寿命化工事(塗装)**にも携わりました。
歴史的建造物の施工を通じて、橋を“文化財として残す”という責任を肌で感じたと言います。
「清洲橋で感じたのは、橋は人の歴史そのものだということ。
あの現場で“構造を守る”という考え方が身につきました。
それが、今の自分の礎になっています。」
令和7年度には、日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会(JASP)から優秀施工賞を受賞。
管理技術の的確さと、チームの統率力が高く評価されました。
「施工管理は机の上の仕事だけではありません。
鉄の温度、風の流れ、塗料の乾き――五感で感じて判断することが大切です。
現場を“生きた教科書”にして、若い人たちに伝えていきたいですね。」
勝鬨橋の塗替えを終えたいまも、染谷は次の現場で指揮を執っています。
安全・品質・効率――その全てを両立する施工管理の現場力こそ、infratの誇りです。

本社
〒216-0044 神奈川県川崎市宮前区西野川2-37-35
※ナビゲーションご利用の際は【神奈川県川崎市宮前区野川1002-2】をご入力下さい
電話:044-788-1944
FAX:044-751-9052